人民元、1ドル=8・1100元に切り上げ

中国人民銀行中央銀行)は21日夜、人民元レートを事実上米ドルに固定している現在の為替制度を一新し、同日午後7時から、現在の1ドル=8・2765元から、1ドル=8・1100元に切り上げるとともに、米ドル、欧州ユーロ、日本円の3大通貨に一定割合で連動すると見られる「通貨バスケット制」を採用すると発表した。

人民元為替制度の変革は1994年1月1日に、公式レートを、市場レートに統合する形で約30%切り下げて以来、11年ぶり。中国がドル固定制から脱却したことで、香港ドルなど、ドルに固定している他のアジア通貨の切り上げや変動幅拡大を促すなど、周辺諸国・地域にも大きな影響を与えそうだ。

FRB議長、人民元切り上げ「一段の通貨調整へ第一歩」
グリーンスパン米連邦準備理事会(FRB)議長は21日、上院銀行住宅都市委員会で証言し、中国の人民元切り上げについて「一段の通貨調整に向けた重要な第一歩だ」と歓迎の意向を表明した。

通貨バスケット制
これまでの人民元は事実上、米ドルだけと連動する形(ペッグ制)のドル固定相場だったが、ドルのような単一の通貨だけではなく、複数の通貨に連動させ、自国通貨を安定させる仕組みを「通貨バスケット制」と呼ぶ。複数の通貨を一つのバスケット(かご)に放り込んだ状態に見立てているので、この名前がある。このかごの中の複数通貨を一定の割合で加重平均して生まれる、架空のバスケット通貨に自国通貨を連動させる。

自国の貿易取引や資本取引で関係の深い国・地域の通貨をバスケット対象として採用するケースが一般的だ。ドル以外の通貨としては円、ユーロなどが考えられる。貿易量をはじめとする指標を使って、自国経済との関係度に応じて、加重具合を変えることによって、自国通貨を安定させやすくする。

マレーシア中央銀行は21日、自国通貨、リンギを実質的に米ドルと連動させてきた通貨政策を改め、通貨バスケット制を採り入れた管理通貨制度に移行すると発表し、即日実施した。アジアで通貨バスケット制を早くから採用してきたのがシンガポールだ。米ドルやユーロ、円で構成する通貨バスケット制を導入している。


すべて日本経済新聞を参考。