イラク邦人人質殺害事件 蛮行は許されない

smallworldjp2004-11-04

  • 罪なき人質殺害 テロリストによる許されざる犯行

まず確認しておきたいことは、香田さんは民間人であり、自衛隊とはなんら関係ない旅行者だったということだ。事情も聞き入れずに、まったく罪のない香田さんを殺害した。無差別に人質を取っては、残虐な方法で殺すという愚行は許されるべきことではない。ジュネーブ条約にも明らかに違反している。亡くなった香田証生さんのご冥福を心から祈る。そして、香田さんのご家族や友人らも多大なる悲しみを味わったに違いない。彼らの気持ちになって考えると、とてもやりきれないものがある。香田さんの遺族も、その後「一日も早くイラクに平和を」といったコメントを発表した。誰しもが望むことであろうが、傍若無人なテロリストに子を殺された両親の悲痛な思いは伝わってくる。それでも、香田さんのご家族は「みなさんに迷惑をかけて申し訳ありません。救出に向け、各方面の協力をいただき、ありがとうございました。」とコメントし、私情を最後まで押し殺しては公に徹した。そんなご家族の中で育った香田さんはとても優しい人柄で、困った人を放っておけない性格であったという。なぜ、罪なき心優しい青年が殺されなくてはならないのだろう。そんな矛盾が頭から離れない人は、きっと少なくないのだろうと思う。そして、自己責任論については強く訴えたくはないが、ある部分では「平和ボケした日本人が、戦争や宗教をなめてかかるとどういうことになるのか」といった結果が皮肉にも露呈された形になったのではないかと思う。

  • 人質殺害犯行グループの本当の狙いに乗じてはならぬ

今回、ザルカウィ容疑者率いるイラク聖戦アルカイダ組織を名乗る犯行グループは、自衛隊の撤退を要求してきた。「日本人なら誰でもよかったのか」と彼らに聞いてみたい。その場面をを想像すると、本当に心の底から怒りと憎しみの気持ちが蘇ってくる。冷静さを失うと、人は時に物事を客観視できなくなる。しかし、見落としてはならないのは、彼ら犯行グループの構成員はイラク国民ではなく、外国人によるテロリスト集団だということだ。本当に自衛隊が撤退することを、真に望んでいたのか。周知の通り、今まで捕まった人質のほとんどが殺害されている。そして、交渉をする気も更々ない様子であった。専門家の見識によれば、むやみやたらと各国の人質をとり、軍隊の撤退を要求しては殺すことによって、それが彼らにとって名誉となり、テロリストとしての名をあげているだけだとの見方もある。そして、ザルカウィ容疑者はこういった残虐な殺害映像を録画し、インターネットを使って世界へ配信することで、ニュースなどを通じて興味を持った人間に見せるようにし、ますます世界を混乱させようとしている。それこそが彼らの狙いであるが故、その見え透いた動揺作戦に決して踊らされてはならないのだ。

  • 国民の過半数が今回の政府の対応を評価

後に日本のマスメディアが行った世論調査では、自衛隊の撤退を拒否した政府の対応を評価する結果が出た。これは至極当然のことだと言える。イラクの復興のために派兵している国家が、テロリストとの交渉などすれば、世界の笑いものになるに違いない。そればかりか、テロリストの要求はどんどんエスカレートし、更なる要求を突きつけてくるという危険性もある。一連の人質事件のなかで、テロリストの要求に応え、兵を撤退した国はフィリピンだけである。当然、アメリカ政府からの批判をもろに受けることになった。つい感情的になって、冷静さを失ってしまうことはあるかもしれない。しかし、今回の政府の対応は誤ったものではないことが世論調査で証明された。

  • 自衛隊撤退への思惑 詭弁としか言い様がない

自衛隊の派遣自体に賛否両論はあるものの、復興支援という名目で行った以上、途中で引き返すことはできない。現にイラクは復興していないのだから。いずれにしても、我々が選挙において投票し、国会で議論がなされて、イラク特措法など様々な段階を踏んで辿り着いた結果である。日米同盟の強化のために行ったのだと言われようと、彼らとて戦場に近い場所に現に派遣されているのである。ファルージャでの米軍による大規模な戦闘が始まり、イラク全土に非常事態宣言が発動された。自衛隊が派遣されているサマーワとてその例外ではない。しかし、我々がすべきは自衛隊に危険が迫ったらどうしようと考えることではない。無事で帰還することを願うことのみであろう。この状況下においても、国民やマスコミが二重基準(ダブルスタンダード)を強く提示することは、派遣されている自衛隊はおろか、世論にも悪影響を与えかねない。最近のメディアを見ていると、「今度こそ自衛隊が危ない」だの「いつか自衛隊に犠牲者が出る」などいったような記事をよく目にする。まるで自衛隊に死んでもらいたいかのような口ぶりである。今回のように、非常事態とも言える状況下での人質事件に対しては、鬼の首を取ったかのように騒ぎ立てておいて、自衛隊の安全が確認されると、「無事でよかった」の一言も言えないである。論理矛盾も甚だしく、これはもはや詭弁としか言い様がない。所詮、世論を作り出す側も商売であるから、自衛隊の不祥事によって生まれる、自分たちの地位の向上しか頭にないから、こんな無責任なことが平気で言えるのである。

  • 戦闘の長期化 戦渦止まぬイラクの今後に我々は

確かにイラク情勢は悪化するばかりだ。ファルージャでの戦闘は激化し、もはや最終局面とも言えるような武力行使で掃討作戦が展開されている。一万人以上の米軍海兵隊ファルージャを包囲し、ザルカウィのアジトと考えられている建物を占拠した。一方、武装勢力側は118台の自爆用車を用意し、自爆攻撃志願兵約300人が戦闘の準備に入ったという。まさに血で血を洗う戦いが、なおも続いているのである。しかし、ここまで踏み込んでしまった以上、もう後に戻ることは許されない。無秩序な現状のイラクを放置しては、過去に戻れないのである。ファルージャは各国のテロリストの温床となってしまったのだ。米軍はザルカウィを追い込むことに尽力し、戦闘の長期化を避け、掃討作戦を速やかに成功させるべきである。そして、一般人である我々がすべきことは、なるべく罪のないイラク全土の民間人の被害を最小限に抑えること、そして駐留軍隊らの無事を祈ることである。

ファルージャ 2004年4月

ファルージャ 2004年4月